2015「宮城でのアース・プロジェクト– Robert Smithson without Robert Smithson」

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現代美術家の橋本聡、美術研究者の松井勝正らが中心となって設立した『アート・ユーザー・カンファレンス(AUC)』による展覧会『宮城でのアース・プロジェクト – Robert Smithson without Robert Smithson』が開催されます。
風の沢ミュージアムの自然豊かな里山に突如現れた巨大な池は、ここで採取された微生物“鞭毛虫”と同じ形をしています。AUCは「冒険されるべき未開の領域として“未分化なもの”という概念がある」と言います。巨大な池を体験している時、私たちは顕微鏡の中の鞭毛虫を見ることができません。しかし本当は見ていないのではなく水の濁った色として鞭毛虫を見ています。私たちの意識は池から鞭毛虫を分化できていない状態なのです。私たちは全てを“見ている”、しかしそれは未分化の状態である。AUCのアース・ワークはそこから始まりました。
AUCが扱ったのは、アメリカのニュージャージー出身の現代美術家のロバート・スミッソン。アース・ワークの黎明期に《スパイラル・ジェティ》等を制作し、後のアーティストたちに多大な影響を与えた人物です。35歳の若さで亡くなったスミッソンが残した作品は決して多くはありませんが、アース・ワークという土木工事さながらの巨大作品を手がけながら、理論家として評論や論文を書き残しました。スミッソンの活動はそれまでの芸術や文化の概念の根本的な見直しを迫るものでした。

「真のフィクションは偽の現実を根絶やしにする。」(ロバート・スミッソン「鏡のユカタン旅行記」)

「知識を得るプロセスとは、知らなかったことを知るプロセスではなくて、未分化だったことが分化していくプロセスだと考えることが出来る。精神が成長するに従って世界の概念は粉々に崩壊していく。大地と同じように精神もまた崩壊のプロセスの中にあるとロバート・スミッソンは考えていた。そして本人が生きているか死んでいるかに関わらず、“ロバート・スミッソン”もまた崩壊のプロセスにある。スミッソンの作品は見られるたびにひび割れを増やし、そのテクストは読まれるたびにひび割れてゆく。」(AUC)
AUCは、既存の作者、鑑賞者、批評家、キュレーターなどとは異なる在り方として、“ユーザー”と名乗る組織です。彼らの『宮城でのアース・プロジェクト – Robert Smithson without Robert Smithson』つまり“スミッソンなしのスミッソン”プロジェクトは、この時代の宮城県の栗駒の土地でスミッソンが制作したならば、この作品を制作しただろうという、スミッソンの居ない世界でスミッソンが活動する取り組みです。
AUCは「公共性あるいは芸術という檻に閉じ込められたそれを救い出す」と言います。“客観的な”スミッソン像と“客観的な”スミッソンの作品像を守るために抑圧された領域にAUCは踏み込みます。AUCは長年に渡ってスミッソンの研究を続けてきました。その科学的な研究を土台にして、スミッソンの行動を導き出します。今回の制作は単に恣意的な想像や解釈ではありません。科学的な知見に基づいた仮想世界、いわばSF(サイエンス・フィクション)の舞台を実現する作業と言えます。
スミッソンの没後、日本で制作された初めてのスミッソンの新作は、意識が地球から分化していくプロセスを元に作られた池、藁葺き屋根が美しい築200年を超える日本様式の建築と出会ったスミッソンの痕跡。作者のあり方さえ崩壊させていくAUCが制作するスミッソンの作品群を体験してください。

ユミソン (風の沢ミュージアム ディレクター)

※アースワークは2017年度まで公開予定です。(要予約)